
潜む多重債務:生活苦に陥った人たち
月収減で借金、自転車操業に
「子どもや食費のために使えるという普通の生活ができる。ありがたいです」
盛岡市の県消費者信用生協の事務所の一室。県央部に住む会社員の佐藤絵美さん(仮名、41歳)は3月上旬、消費者金融やカードローン会社への過払い分として、約400万円が戻ってくる見通しとなったことを相談員から聞かされた瞬間、目頭を押さえた。グレーゾーン金利によって10年間、返済に悩まされてきたのだ。
同信用生協によると、07年6月から1年間の相談者5037人のうち、借り入れの動機として、最も多いのが生活費。約4割となる。佐藤さんもその一人だ。
多重債務に陥ったきっかけは98年。マイホームを建てた時期から始まる。佐藤さんはパート勤務。夫(47)は新居に住むようになると、体力的に大変という理由で、それまで建設会社の仕事と掛け持ちでやっていた夜間の運転代行を辞めた。それでも十分に住宅ローンの返済は可能だった。
しかし、その建設会社も間もなく倒産。再就職したが、月収は約5万円減少した。家を手放したものの、夫はローンの返済に追われた。佐藤さん一人のパート収入では生活費や2人の子どもの教育費を支払えない。親は収入が少なく、他に頼れる人もいなかった。仕方なくカードローンや消費者金融に手を出した。冠婚葬祭などの出費もかさみ、返済した分だけ、また借りるという自転車操業に陥った。「返済したら食費が足りなくなる。でも返さないといけない」。眠れない日々が続いた。
昨年11月の時点で、佐藤さんは月収17万円に対して、支出はカードローン4社と消費者金融5社への支払いだけで19万円。借金の残高も500万円あった。自転車操業もままならなくなっていた。
佐藤さんは信用生協に相談。この時、年利20%台と利息制限法の上限金利(年利15~20%)を超える利息を支払っていたことを知った。過払い分を元金に充てて借金を圧縮し、残りを返済していく任意整理を実行。同12月からは、消費者金融などからの請求が止まり、借金の元金返済もすべて終えた。結局約10年間で900万円も払い過ぎていた。
最近では月5万円の貯金ができるようになった。佐藤さんは「今は家計簿をつけるのがとても楽しい」と話す。
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カードさえあれば支払いや借り入れが可能となり、一時的なものも含めれば、身近になった借金。その中で、5社以上の消費者金融を利用する多重債務者は、県内で推計9000人いるといわれている。多重債務者は、自己責任だけでそうなってしまったのか。普通に生活すれば、陥らないのか。多重債務に陥る背景を探った。【安田光高】





